本レビュー第3回「なぎさホテル」を読んで
昨晩、寝付けなかったので小説を読もうと思い本棚を見たら、この本が目に止まった。
かれこれ2、3回は読んだと思うが、何回読んでも楽しめるタイプの人間なので問題ない。
作家の伊集院静氏の自伝的小説で、28歳から7年間過ごしたなぎさホテルを舞台とした物語である。
人と折り合いをつけることができず、荒くれた生活を送っていた伊集院氏は、勤めていていた広告代理店をクビになり、田舎に帰る途中、最後に海が見たくなり何気なく立寄った逗子の海。そこである一人の老人と出会う。
その老人こそがなぎさホテルの支配人であり、その後、金もなく、身元も分からない28歳の若者に、結果7年間部屋を貸すことになる。
無気力で、半ば人生を諦めていた青年は、支配人や従業員のまるで家族のような優しさや、そのホテルで起こる様々な出来事を通して少しずつ生きる活力を取り戻し、そこで起こった出来事を文章にしていく。
それがやがて、小説となり、この部屋で処女作「皐月」を含めた数々の小説を描き下ろし、今日の大作家となっていくのである。
あとがきにはこう記してある。
「今思い出しても、なぜあの年のあの季節に逗子の海を歩いたのだろうかと不思議な感慨を抱いてしまう。
ほんの数分でも、あの海岸を歩く時刻がずれていれば、小説家になってもいなかったろうし、ひょっとしてこの世にいなかったかもしれない。人と人が出会うということはこの上ないと、人は人によってしかその運命を授からないのだろう。」
この小説を読むと、人生は簡単に説明できるものではなく、何か不思議な力が働くような時があるのだと思える。いつか、運命というものに委ねる時も来るのだろうと思う。
他人の人生にとやかく言うことなどないし、ましてや自分の人生にさえも正解はないということだろう。
名作です。
~札幌ひげぼうず~
youtubeチャンネル登録お願いします⇒https://bit.ly/2Q66T2f
インスタグラム毎日更新!! フォローして下さい!⇒https://bit.ly/2AA9PhH